右の図のように、(孤立状態ではQ0(c)に帯電した)接地していない半径Rの導体球の中心からH(H>R)の位置に点電荷Q(c)がある。 この時、点電荷の受ける力と導体球表面に誘起される電荷を求める。
一般に、導体球においては導体球表面で電界が垂直で、導体球内部で電界が’0’になるように電荷が分布する。
この場合、先に示した’大きさと符号の異なる二つの点電荷がつくる電位’0’の等電位面が球面になることを考慮すると、
この面は接地した(電位’0’の)導体球の表面と見なすことができることが分かる。導体球の外側では、導体球表面に分布した電荷が作る電界と、
点電荷の作る電界は同じになる。よって、導体球表面の連続的な電荷分布は点電荷に置き換えて考えることができることが分かる。
等価な点電荷としては、先に示したように導体球の中心から点電荷の方へ向かって、R2/Hの位置に、−QR/H(c)
の点電荷(影像電荷)を考えれば良い。
点電荷Qに対しては、接地された導体球もこの影像電荷も’導体球の外側では’同じ効果を与える。
このような影像電荷を考えると、導体球は全体として、−QR/H(c)なる電荷を持つことになる。(これだけの電荷を持つことによって
導体球は電位が’0’になっている。)
今考えている導体球は、全体として電荷量が’Q0(c)’でなければならないので、
−QR/H(c)の電荷の他に、Q0+QR/H(c)の電荷が、導体球のどこかに分布していなければならない。さて、導体球表面では、電界は、導体球表面に対して垂直でなければならない。いま、Q(c)と−QR/H(c)の二つの電荷が作る電界は導体球表面で垂直になっているので、残りの’
Q0+QR/H(c)’を導体球表面で電界が垂直になるように分布させればよいことになる。点電荷として、そのように電界が分布するのは、
導体球の中心にある場合のみである。よって、Q0+QR/H(c)を導体球中心に点電荷として与えれば、接地していないQ0(c)の
電荷を持つ導体球とQ(c)の点電荷によって作られる電界を与えることができる。
(勿論、実際の導体球では導体球表面で電界が導体球表面に垂直で、導体球内部で’0’になるように導体球表面に電荷が分布する。
導体球の中心に Q0+QR/H(c)、導体球の中心から点電荷の方へ向かって、R2/Hの位置に、−QR/H(c)の二つの影像電荷を考えることになる。)
点電荷Qの受ける力は、導体球に分布した電荷が点電荷Qの位置に及ぼす電界で決る。この電界は、導体球の二つの影像電荷によって表される。
電界の方向は導体球の中心からQ(c)の点電荷に向かう方向(反発する方向)である。電界の大きさEは、
E=(Q0+QR/H)/4πε0H2−(QR/H)/4πε0(H−R2/H)2
力Fは反発する方向を正に取ると、
F=QE
=Q(Q0+QR/H)/4πε0H2−(Q2R/H)/4πε0(H−R2/H)2
=QQ0/4πε0H2−(Q2R/H)/4πε0*(1/(H−R2/H)2
−1/H2)
=QQ0/4πε0H2−(Q2R/H3)/4πε0
*(1/(1−(R/H)2)2−1)
導体表面の面電荷蜜度σは、導体内部で電界が’0’であることから導体表面での電束密度Dと等しい。
よって、導体表面(極近傍外側)での電束蜜度が導体表面に誘起される電荷の面電荷密度と一致する。
導体表面の極近傍外側での、電束密度Dは、電界EによってD=ε0Eで与えられるので、導体表面の極近傍外側での、電界Eを求める。(電束密度は、電界と同様に点電荷の作る電束密度を考えて、直接求めることもできる。)
導体球の中心と点電荷と導体球表面の電荷密度を知りたい点rを含む平面を考えるとこれらの電荷の作る電界は常にこの面内にある。
この面内での電界Eを導体球表面に平行な成分Etと垂直な成分Elに分けて考える。
また、点rについて、点電荷と導体球中心を結ぶ線を軸として回転して与えられるすべての点で、電界Eは、同じである。
(もちろん空間におけるEは、点を回転(移動)すれば方向が変わる。しかし、先に考えた面内では、
回転しただけ’面’も回転して、この面内では電界Eが不変に見える。(こうなるように面を考えたということ))
’導体球中心のQ0+QR/Hの電荷’と、’Hにある点電荷Q及びR2/Hに想定した−QR/Hの影像電荷’に分けて電界分布を考える。
導体球中心に対して、点電荷と点rのなす角をθとし、右のように変数を取れば、面内での電界Esは、
点電荷と影像電荷による電界EQ、Emの和として、
Eml=−(RQ/H)/4πε0Lm2*cosθm
Emt=−(RQ/H)/4πε0Lm2*sinθm
EQl=Q/4πε0LQ2*(−cosθQ)
EQt=Q/4πε0LQ2*sinθQ
EQ0l=(Q0+RQ/H)/4πε0R2
ただし、Etはθの増加する方向、Elは、球の半径の増加する方向を正に取った。
Lmsin(θ+θm)=Rsinθ、R2/H+Lmcos(θ+θm)=Rcosθ
LQsinθQ’=Rsinθ、LQcosθQ’+Rcosθ=H、θQ=θ+θQ’
であるから変形して
Lm2=R2+(R2/H)2−2(R2/H)Rcosθ
=R2(1+(R/H)2−2(R/H)cosθ)
=R2μ(μ=1+(R/H)2−2(R/H)cosθとおいた)
cosθm=R(1−(R/H)cosθ)/Lm=(1−(R/H)cosθ)/μ1/2
sinθm=(R2/H)sinθ/Lm=(R/H)sinθ/μ1/2
LQ2=R2+H2−2HRcosθ
=H2(1+(R/H)2−2(R/H)cosθ)
=H2μ
cosθQ=(Hcosθ−R)/LQ=(cosθ−R/H)/μ1/2
sinθQ=Hsinθ/LQ=sinθ/μ1/2
これらの関係を代入して、
El=EQl+Eml+EQ0l
=−Q/4πε0LQ2*cosθQ
−(RQ/H)/4πε0Lm2*cosθm
+(Q0+RQ/H)/4πε0R2
=−Q/4πε0*((cosθ−R/H)/μ1/2/H2μ
+R/H*(1−(R/H)cosθ)/μ1/2/R2μ)+(Q0+RQ/H)/4πε0R2
=−Q/4πε0μ3/2*(R/H)*(1/R2−1/H2)+(Q0+RQ/H)/4πε0R2
=−Q/4πε0(1+(R/H)2−2(R/H)cosθ)3/2*(R/H)*(1/R2−1/H2)+(Q0+RQ/H)/4πε0R2
=−Q/4πε0(H2+R2−2RHcosθ)3/2*(H2−R2)/R+(Q0+RQ/H)/4πε0R2
Et=EQt+Emt
=Q/4πε0LQ2*sinθQ
−(RQ/H)/4πε0Lm2*sinθm
=Q/4πε0*(sinθ/μ1/2/H2μ
−(R/H)(R/H)sinθ/μ1/2/R2μ)
=0
(導体球表面で、電界が垂直になるように影像電荷を選んだのであるから’Et=0’になるのはあたりまえである。)
導体表面に誘起された電荷の面密度をσとすれば、
σ=ε0El=−Q/4π(H2+R2−2RHcosθ)3/2*(H2−R2)/R+(Q0+RQ/H)/4πR2
q=∫σ2πRsinθRdθ(θ;0〜π)
=∫(−Q/4π(H2+R2−2RHcosθ)3/2*(H2−R2)/R+(Q0+RQ/H)/4πR2)*2πRsinθRdθ(θ;0〜π)
=∫(−QR/2(H2+R2−2RHcosθ)3/2*(H2−R2)+(Q0+RQ/H)/2)*sinθdθ(θ;0〜π)
=∫(−QR/2(H2+R2−2RHξ)3/2*(H2−R2)+(Q0+RQ/H)/2)*dξ(ξ;−1〜1)
=[−QR(−2)/2(−2RH)(H2+R2−2RHξ)1/2*(H2−R2)+(Q0+RQ/H)/2*ξ](ξ;−1〜1)
=[−Q/2H(H2+R2−2RHξ)1/2*(H2−R2)+(Q0+RQ/H)/2*ξ](ξ;−1〜1)
=−Q/2H(H2+R2−2RH)1/2*(H2−R2)
+Q/2H(H2+R2+2RH)1/2*(H2−R2)+Q0+RQ/H
=−Q/2H|H−R|*(H2−R2)+Q/2H|H+R|*(H2−R2)+Q0+RQ/H
=−Q/2H*(H+R)+Q/2H*(H−R)+Q0+RQ/H (H>Rであるから)
=−QR/H+Q0+RQ/H
=Q0