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'99 12/13 レポートの略解(解説)


T 厚さT[m]の無限に広がる比誘電率εrの誘電体平面があり、この平面の外側に一様な電界を印加した。 この電界の平面に垂直な成分をE、平行な成分をEとして、以下の問いに答えよ。

@ 誘電体内部の電界を平面に垂直な成分と平行な成分に分けて求めよ。
A @を参考にして分極により誘電体表面に現れる電荷の面密度を求めよ。
B 誘電体内部の電束密度を平面に垂直な成分と平行な成分に分けて求めよ。
C 誘電体平面の片側に面密度σ[C/m2]の真電荷(孤立した電荷)をもう一方の側に面密度−σ[C/m2]の真電荷を与えた。 誘電体内部の電束密度と電界を平面に垂直な成分と平行な成分に分けて求めよ。
D @およびCにおいて、誘電体平面の表面両側の間の電位差はどれだけか。

解答例

@ 誘電率の異なる媒質界面では、面内成分の電界が等しく、面に垂直成分の電束密度が等しい。 誘電体内の電界の面に平行な成分は、外部の電界と等しいので、E [V/m]、面に垂直な電界成分は、外部の電束密度と等しいので、 ε0/ε0εr=E/εr [V/m]

A 分極により表面に誘起される面電荷密度σsは、分極の面に垂直な成分の大きさと等しい。
 D=ε0/εr+Pであるから、誘電体平面に向かう方向を正として、
 σs=−P=−(D−ε0/εr) =−ε0(1−1/εr)E [C/m2]

B @を参考にして、平行な成分は、ε0εr[C/m2]、 垂直な成分は、ε0[C/m2] 

C 真電荷の面密度だけ、電束密度の垂直成分が変化するので、
 電束密度は、並行成分: ε0εr[C/m2]、  垂直成分 : ε0+σ[C/m2] 
 電界は、並行成分: E[V/m]、垂直成分 : E/εr+σ/ε0εr[V/m] 

D 内部の電界は一様であるから、電界の垂直成分に厚さTをかければ得られる。
 @について、ET/εr [V]
 Cについて、ET/εr+σT/ε0εr[V]


U 半径R[m]の円柱状導体(内側導体)と筒の肉厚t[m]の内半径R+T[m]の円筒状導体(外側導体)を同軸状に配置して同軸線とした。 内側導体と外側導体の間は、比誘電率εrの媒質で満たされている。以下の問いに答えよ。

@ 内側導体に、単位長さあたりλ[C/m]の電荷を与えた。任意の点における電束密度を求めよ。座標は適当に設定せよ。
A @において、外側円筒導体の外側表面を基準電位として、任意の点における電界と電位を求めよ。座標は適当に設定せよ。
B @,Aにおいて、内側導体(円柱状導体)の中心軸からの距離をr[m]として、電束密度、電界、電位をグラフで表せ。
C 内側導体と外側導体の間の単位長さ当たりの静電容量を求めよ。
D Cにおいて、R=1[mm]、T=2[mm]、t=0.1[mm]、εr=3のとき、単位長さ当たりの静電容量を求めよ。

解答例

@ 円柱導体の中心軸からの距離をr[m]とする。電束密度にガウスの定理を適用する。 (電束密度は、円柱の中心軸から放射状にあるので)、円柱の中心から外に向かう方向の電束密度の大きさを D[C/m2]とすれば、円柱の中心を中心軸とする高さL[m]、半径r[m]の円柱閉曲面を考えて、 ガウスの定理の右辺は、 2πrD となる。
導体内部では電荷は存在しない ので、"λ[C/m]の電荷は円柱の表面に均一に分布する"、 導体内部では、電界も電束密度も0であるので、"外側円筒の内側表面には、−λ[C/m]の電荷が均一に分布する"、 外側円柱の外側表面には、λ[C/m]の電荷が均一に分布する" ことになる。よって、

 2πrLD=0 (rR、R+TR+T+t)、λL (RR+T、R+T+tr) 
 D=0 [C/m2] (rR、R+TR+T+t)
 D=λ/2πr [C/m2] (RR+T、R+T+tr)

A誘電率は、R+TR+T+tでε0εr、R+T+trでε0であるから、
 E=0 [V/m] (rR、R+TR+T+t)
 E=λ/2πε0εrr [V/m](RR+T)
 E=λ/2πε0r [V/m](R+T+tr) 電界をr=R+T+tを基準電位にして積分すれば、電位φが得られる。円柱導体の中心軸からの距離をd[m]として、電位φ(d)=∫−Edr(r;R+T〜d)は、
 R+TR+T+t のとき
  φ=0 [V]
 R+T+td のとき
  φ=φ(R+T+t)+∫−Edr(r;R+T+t〜d)=∫−λ/2πε0rdr(r;R+T+t〜d)      =λ/2πε0・log((R+T+t)/d) [V]
 RR+T のとき
  φ=φ(R+T)+∫−Edr(r;R+T〜d)=∫−λ/2πε0εrrdr(r;R+T〜d)      =λ/2πε0εr・log((R+T)/d) [V]
 dR のとき
  φ=φ(R)=λ/2πε0εr・log((R+T)/R) [V]

B
λ>0のときのグラフを示す。
青色は電束密度、赤色は電界、黒は電位を表す。

C Aにおいて、内側導体(r=R)と外側導体(r=R+T)の間の電位差 V は、λ/2πε0εr・log((R+T)/R) [V] であるから、
 V=λ/2πε0εr・log((R+T)/R)
 単位長さ当たりの静電容量CLは、
 CL=λ/V=2πε0εr/log((R+T)/R) [F/m]

D 値を代入して、CL≒1.51×10-10[F/m]≒150[pF/m]


V 厚さの無視できる面積S[m2]の導体板1,2が間隔d[m]で平行にある。(S≫d2とする) 導体板1にはQ[C]の電荷が、導体板2には−Q[C]の電荷がある。また、導体板2から導体板1に向かって垂直にz軸を設定し、 z軸の原点は導体板2にあるとする。ほかに必要な座標および座標軸は適当に設定して、以下の問いに答えよ。

@ 任意の点における電界の大きさと方向を求めよ。
A 導体板2に対する導体板1の電位を求めよ。
B 導体板1と導体板2の間の静電容量を求めよ。
C 導体板1と導体板2の間に働く力を求めよ。
D d=1[mm]、S=1[m2],導体板1と導体板2の電位差2[V]の時、導体板間の静電容量と、導体板間に働く力を求めよ。
E Dにおいて、全体を比誘電率εrの媒質で満たした。導体板間の静電容量と、導体板間に働く力はどうなるか。

解答例

@ 平面においては、電界は平面に垂直な方向を向く。平面の両側に等しく電気力線はのびてゆくので、 平面から垂直に外に向かう方向の電界の大きさをE1(2)[V/m]として、上下面の面積sの円柱閉曲面で、電界にガウスの定理を適用すると、

 導体板1に対して、2E1s=Qs/Sε0 → E1=Q/2Sε0
 導体板2に対して、2E2s=−Qs/Sε0 → E2=−Q/2Sε0
 2つの導体板による電界を合成すれば、電界は、導体板間のみに存在し、導体板間の外側には存在しない。

 ゆえに、求める電界は、z軸に平行で、z軸の正の方向の電界を、E(z)とおいて、
 E(z)=0[V/m] (z0、dz)
 E(z)=−Q/Sε0[V/m] (0d)

A @で得た電界をz:0〜dまで、積分すれば得られる。電位をV[V]として、
 V=∫−Edz(z:0〜d)=∫Q/Sε0dz(z:0〜d)=Qd/Sε0 [V]

B Aより、静電容量C[F]は、
 C=Q/V=Sε0/d [F]

C 導体板間に蓄えられるエネルギーW[J]は、Q2/2C であるから、
 力F[N]は、板の間隔が開く方向を正として、F=−∂W/∂dである。Qが一定であるので、
 F=−Q2/2・∂(1/C)/∂d=Q2/2C2・∂C/∂d
 =Q2/2C2・(−Sε0/d2)=−Q2/2Sε0 [N]
 Q2/2Sε0 [N] の力が、板の間隔が狭くなる方向(引力)に働く。
 単位面積あたりの力f[N/m2]は、f=F/S=−Q2/2S2ε0 =−1/2・ε02 (Eは、導体板間の電界)となり、空間に蓄えられる単位体積あたりのエネルギーと大きさは一致する(符号は逆)。

D BとCを参考にして、
 静電容量 C=Sε0/d =8.854×10-12/10-3=8.854×10-9 [F]
 力(引力)F=Q2/2Sε0 =(8.854×10-9×2)2/(2×8.854×10-12) =1.77×10-5 [N]

E電界が、1/εr倍になるので、導体板間の電位差も1/εr倍になる。静電容量は、電位差に反比例するので、εr倍になる。
 Cでの力の導出を考えれば、比誘電率εrの媒質中では、静電容量の変化を受けて、ε0をε0εrに 置き換えればいいことがわかる。よって、力も1/εr倍になる。


これでこの項目は終わり

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