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電気磁気学II (2000年度 前期 本試験) 解答のコーナー

I 真空中に充分長い外半径1〔m〕の円筒導体1と内半径2〔m〕の円筒導体2が同軸状に配置されている。 それぞれの円筒の厚さは充分に薄いとする。以下の問いに答えよ。(1<R2とする。)

@ 円筒導体1と円筒導体2にΙ〔A〕の電流を互いに逆方向に流した。同軸の中心からの距離r〔m〕の位置での磁界を求めよ。
A @において、同軸の中心からの距離r〔m〕の位置での単位体積当たりの磁気エネルギーを求めよ。
B @において、円筒導体1と円筒導体2を一組の導体と見なしたときの単位長さ当たりのインダクタンスを求めよ。
C Bにおいて、=1.1〔mm〕、=3〔mm〕のとき、インダクタンスはいくらか。 (真空の透磁率μ=4π×10−7〔H/m〕である。)

解答例

@ 磁界は、円筒導体の中心軸を中心とした円周の接線方向を向く。半径r〔m〕の円周に沿って、磁界を周回積分すれば、円周内の電流と等しい。磁界と周回積分の方向は常に平行であるから、円筒導体1の電流の方向に進む右ねじの回転方向の磁界をHとすれば、
2πrH=0 (r
2πrH=Ι (R
2πrH=0 (r)(電流は、互いにうち消して'0')

 H=0 〔A/m〕 (r、r
 H=Ι/2πr 〔A/m〕(R

A 磁界のない領域では、磁気エネルギーはないので、についてのみ考える。 B=μH〔Wb/mであるから、単位体積あたりの磁気エネルギーw〔J/mは、
 w=BH/2=μ/2=μΙ/8π〔J/m

B 単位長さあたりの磁気エネルギー=∫w2πrdr(r;R〜R =∫μΙ/4πrdr(r;R〜R =μΙ/4π*log(R/R)〔J/m〕
 単位長さあたりのインダクタンスを〔H〕とすれば、 =LΙ/2とも表される。 よって、=μ/2π*log(R/R)〔H/m〕

C Bを参考にして、 =μ/2π〔H/m〕=2×10−7〔H/m〕=0.2〔μH/m〕

II 空間的に一様な磁場B〔Wb/mがz軸の正の方向にある。以下の問いに答えよ。 ただし、電子の電荷をq〔c〕、質量をm〔Kg〕とする。
@ ある瞬間に、速さυ〔m/s〕で、電子がx軸方向に運動していた。このとき、電子が磁場との相互作用により受ける力を求めよ。
A @の力は、電子に円運動を引き起こす。円運動の半径と周期を求めよ。
B Aにおいて、B=1〔Wb/m〕、υ=100〔Km/s〕、m=9.1×10−31〔Kg〕、q=−1.6×10−19〔c〕とすると円運動の半径と周期はいくらになるか。

解答例

@ 力をとすれば、速度のベクトルをυ、磁場のベクトルをとして、=qυ×で与えられる。外積の方向は、y軸の負の方向を向くので、y軸の正の向きに、−qυB〔N〕の力を受ける。(電子の電荷は負であるから、y軸の正の方向に|qυB|〔N〕の力を受ける。)

A 円運動の半径をR〔m〕とおけば、qυB=mυ/Rであるので、R=mυ/qB〔m〕。 (qυB<0(R<0)の時、円運動に沿って右ねじを回したとき進む方向に磁場が向いている。qυB>0(R>0)の時、円運動と逆方向に右ねじを回したとき進む方向に磁場が向いている。
 周期をT〔s〕とおけば、一回りするのに要する時間であるから、2πR=υTより、 T=2πR/υ=2πm/qB〔s〕

B 半径 R=0.57〔μm〕=5.7×10−7〔m〕
  周期 T=36〔ps〕=3.6×10−11〔s〕

III 空間的に一様な磁場B〔Wb/mがz軸の正の方向にある。右図のように、この磁場中に、コイルを辺に平行に二分する軸(x軸とする)を回転軸とするN〔回巻〕の一辺がa〔m〕の正方形のコイルがある。コイルの端子A→Bへとコイルをたどったとき右ねじの進む方向をコイルの方向とする。x軸の正の方向から見て、磁場の方向からコイルの方向への反時計回りの角度を磁場とコイルのなす角とし、θ〔rad〕で表す。以下の問いに答えよ。

@ コイルにA→Bに向かってΙ〔A〕の電流を流した。コイルと磁場のなす角をθ〔rad〕として、コイルに働くトルクを求めよ。
A コイルを角速度ω〔rad/s〕で回転させた。コイルと磁場のなす角がθ〔rad〕のとき、端子ABに発生する電圧を求めよ。
B 端子ABにR〔Ω〕の抵抗を付けた。コイルに流れる電流と、コイルに働くトルクを求めよ。
C Bのトルクは、コイルにどの様な作用をするか。
D Cにおいて、コイルの角速度をω〔rad/s〕で一定になるように、外力を与える。外力がコイルに与える単位時間当たりのエネルギーと抵抗で消費される電力の関係を求めよ。

解答例

解答例

@ x軸に平行なコイルの辺の受ける力は、y軸方向にΙaB〔N〕である。トルクとして作用するのはこの力の円周方向成分(ΙaBsinθ)である。2つのx軸に平行なコイルの辺でトルクは発生し、どちらのトルクもθを減少させるように働く。回転軸からの距離がa/2であることとN〔回巻〕であることを考慮して、コイルの受けるトルクT〔Nm〕は、θを増加させる方向に選べば、T=−2*aN/2*ΙaBsinθ= −ΙaBNsinθ〔Nm〕

A x軸に平行なコイル内のq〔c〕の荷電粒子は速さa/2*ω〔m/s〕で磁場中を運動するので、ローレンツ力を受ける。速度の磁場に垂直な成分はaω/2*sinθであるから、荷電粒子はqaω/2*sinθB〔N〕の力を受ける。力の方向は、A→Bへと至る方向である。荷電粒子がA→Bへ移動したときに受けるエネルギーは一辺あたり、2aqaω/2*sinθB〔J〕であるので、端子Aを基準として、端子Bには、N〔回巻〕であることを考慮して、ωBNsinθ〔V〕の電圧が発生する。

B コイルの電流は、ωBNsinθ/R〔A〕となる。トルクは、@を参考にして、−aωBNsinθ/R〔Nm〕

C θを減少させる、すなわち、回転速度ωを減少させようとする。

D 外力がコイルに与える単位時間あたりのエネルギーP〔W〕は、 P=ωBNsinθ/R*ω=(aωBNsinθ)/R〔W〕
2乗のかっこ内の量は、コイル両端の電圧であるから、この式で与えられる単位時間あたりのエネルギーは、抵抗で消費される電力と一致している。 (コイルの回転を維持するために外力がコイルに与えたエネルギーは抵抗で消費されるエネルギーと等しい。)


これ以降はありません

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