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'00 6/9 レポート 略解(解説)

I 右のように比透磁率μrの鉄心にN回巻きのコイルが巻いてある。コイルには、Ι〔A〕の電流が矢印の方向に流れている。以下の問いに答えよ。
  1.鉄心内部の磁束を求めよ。
  2.鉄心のギャップの磁束密度を求めよ。
  3.鉄心の芯内とギャップそれぞれについて、磁界を求めよ。
  4.鉄心のギャップ面に誘起される磁荷の面密度を求めよ。
  5.ギャップ面間に働く力を求めよ。
  6.全体の磁気抵抗はいくらか。
  7.a=0.5〔m〕、b=1〔m〕、S=0.001〔m2〕、x=1〔cm〕、μr=1000、 N=1000〔回〕、Ι=10〔A〕のとき、鉄心のギャップの磁束密度を求めよ。

解答例
  1.
 磁気抵抗Rは、ギャップでの磁束の広がりを無視すると、
  R=(x/μ+(2a+2b−x)/μμ)/S〔AT/Wb〕
 であるから、磁束Φは、Rを用いて、
 Φ=NΙ/R 〔Wb〕
  =NΙSμ/(x+(2a+2b−x)/μ〔Wb〕
  2.
 面積がS〔m〕であるから、磁束密度Bは、
 B=Φ/S〔Wb/m=μNΙ/(x+(2a+2b−x)/μ)〔Wb/m(=NΙ/RS)〔Wb/m
  3.
 鉄心内の磁束密度はB、透磁率はμμであるから、鉄心内の磁界Hは、
 H=B/μμ=NΙ/(xμ+(2a+2b−x))〔AT/m〕
 ギャップでの磁束密度はB、透磁率はμであるから、ギャップ内の磁界Hは、
 H=B/μ=NΙ/(x+(2a+2b−x)/μ)〔AT/m〕
  4.
  (磁気双極子により生じる)磁荷の面密度σは、右のように閉曲面を選んで、ガウスの定理を適用すると
 d =∫σ/μ*d
  であるから、σ=μ(H−Hとなる。ゆえに、
 σ=μNΙ(μ−1)/(xμ+(2a+2b−x))〔Wb/m
 磁気抵抗を使って表せば、σ=NΙ(1−1/μ)/SR〔Wb/m

  5.
 磁気回路の全エネルギーWは次のように
  W=BHS((2a+2b−x)/2+BHS((2a+2b−x)/2 =(NΙ/R/μS*((2a+2b−x)/μ+x)〔J〕
 で与えられ、これをギャップxで偏微分すれば力が得られる。鉄心の実効的な長さ
(2a+2b−x)がギャップxに対して、充分に長ければ、(2a+2b−x≒2a+2b)、(Rはギャップxに対して一定)と見なせる。
このときには、引力が働き、大きさfは、f=∂W/∂x=(NΙ/R/μ〔N〕
  6.
 すでに求めているように、磁気抵抗=(x/μ+(2a+2b−x)/μμ)/S〔AT/Wb〕
  7.
 ’2.’を参考にすれば、=4π×10−7×1000×10/(0.01+2.99/1000)=0.97〔Wb/m

II 真空中で、半径r〔m〕の円状にΙ〔A〕の電流が流れている。円内を貫通する磁束を求めよ。

解答例
 半径r〔m〕の円上の点〔m〕を速度υ〔m/s〕で運動するq〔c〕の点電荷が点に作る磁界H(R)は、ビオ・サバールの法則より、次のように与えられる。
  =(qυ×()/||)/4π|
 円の中心を原点とし、を結ぶ方向にx軸をとり、電流が右ねじの方向になるようにz軸を選ぶ。円周上の単位長さ当たりの電荷密度をλ〔C/m〕とすれば、全電荷が点に作る磁界は、先の式のqがλ|d に変わるので、
  H(R)=∫(λ|d υ×()/||)/4π|
 積分は全電荷について行うので、x軸からの角度をθとすれば、d |=rdθとなる。また、それぞれのベクトル成分は、
  υ=(−υsinθ,υcosθ,0)(|υ|=υ),=(rcosθ,rsinθ,0),=(R,0,0)である。
 外積の計算を行えば、は,z軸成分しかないことが分かる。
  =∫λυ(r−Rcosθ)rdθ/4π(r+R−2rRcosθ)3/2 (θ;0〜2π)
 Ι=λυ
であるから、
  =∫Ι(r−Rcosθ)rdθ/4π(r+R−2rRcosθ)3/2 (θ;0〜2π)
 磁束密度B〔Wb/mは、=μで与えられる。
 磁束Φ〔Wb〕は、磁束密度を積分して、
 Φ=∫B2πRd R(R;0〜r)
 =∫∫μΙ(r−Rcosθ)rRdθ/2(r+R−2rRcosθ)3/2 d (θ;0〜2π)(R;0〜r)
 =μΙ/2*∫∫(r−Rcosθ)rR/(r+R−2rRcosθ)3/2 dθd (θ;0〜2π)(R;0〜r)

R=rtとおけば、
 Φ=μΙr/2*∫∫(1−tcosθ)t/(1+t−2tcosθ)3/2 dθd (θ;0〜2π)(t;0〜1)
 ここで、∫∫(t−tcosθ)/(1+t−2tcosθ)3/2 dθd (θ;0〜2π)(t;0〜1)は定数を与える。この定数をαとおけば、

 Φ=αμΙr/2〔Wb〕

III 右のようにz軸を中心とした同軸状(円柱状と円筒状)の導体に一様に無限長の直線状電流が流れている。以下の問いに答えよ。
  1.点(x,y,z)〔m〕における磁界を求めよ。
  2.=3〔mm〕、=10〔mm〕、L=5〔mm〕、円柱と円筒の空隙の比透磁率=μΙ=−Ι=10〔A〕とする。磁界の大きさと磁束密度をz軸からの距離r〔m〕の関数として、グラフで表せ。
  3.同軸方向の単位長さ当たりの電流による磁気エネルギーを求めよ。

解答例

  1.
 磁力線は、同軸の中心を中心軸とした同心円状にxy平面に平行にある。磁界が磁力線の接線の方向を向くことを考慮して、 周回積分d ;閉曲線)=Ι(閉曲線で囲まれた電流)を利用する。
r=(x+y1/2とすれば、半径rの円周上で磁界の大きさHは等しいので、周回積分値はH2πrとなる。磁界の正の方向をz軸の正の方向に右ねじを進める方向に選べば、周回積分値と閉曲線内の電流と等しいことから、Ιを場合分けして、
  : Ι=Ι/R
L  : Ι=Ι
  : Ι=Ι+Ι(r−L)/(R−L
r  : Ι=Ι+Ι

よって、磁界の大きさHは、
  : H=Ιr/2πR〔A/m〕
L  : H=Ι/2πr〔A/m〕
  : H=(Ι+Ι(r−L)/(R−L))/2πr〔A/m〕
r  : H=(Ι+Ι)/2πr〔A/m〕

ベクトルで表せば、
  : =Ι/2πR*(−y,x)〔A/m〕
L  : =Ι/2π(x+y) *(−y,x)〔A/m〕
  : =(Ι+Ι(x+y−L)/(R−L))/2π(x+y)*(−y,x)〔A/m〕
r  : =(Ι+Ι)/2π(x+y)*(−y,x)〔A/m〕

  2.
 1.で求めたHに値を代入すれば、磁界の大きさは、
3〔mm〕  : H=1.8×10〔A/m〕
3〔mm〕5〔mm〕  : H=1.6/r〔A/m〕
5〔mm〕10〔mm〕  : H=1.6/r−2.1×10 (r−2.5×10−5)/r〔A/m〕
10〔mm〕r  : H=0〔A/m〕

  3.
 Ι+Ι≠0の時は、単位長さ当たりの磁気エネルギーは発散するので、Ι+Ι=0の場合について計算する。単位長さ当たりの磁気エネルギーwは、 w=∫BH/2d (S;xy平面全体)で与えられる。B=μμであることを考慮して、1.を参考にすれば、
 w=1/2*∫BHd (S;xy平面全体) =μ/2*∫H2πrd (r;0〜∞) =μ/2*Ι/2πR*∫rd (r;0〜R+μμ/2*∫Ι/2πrd r(r;R〜L) +μ/2*Ι*∫ (1−(r−L)/(R−L)) /2πrd (r;L〜R=μΙ/16π +μΙ/4π*(μlog(L/R+(R/(R−L))*(log(R/L) +(L/4−3/4*R)/(R−L))〔J/m〕


これでこの項目は終わり

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