右の図において、ベクトルAとBを考える。ただし、A、Bとも始点はOにあるとする。
Bを含む直線lBを考えて、Aの終点AからlBにおろした垂線の足をALとする。
(線分OALはAのB(lB)の方向の成分になっている。これは、lBをx軸だと思えば、
線分OALがAのx成分になっている事と同じ事である。)
いま、線分の長さOALは、AとlBのなす角をθとすると
|A|cosθ
と書ける。
ここで、|A|cosθと|B|の積をAとBの内積と呼び、A・Bと表現する。
Bが単位ベクトルeBの場合には、A・eB=|A|cosθであるから、
A・eBは、AのeB方向成分を表す。
(AのeBへの射影の大きさをあらわす。)
A・B=A・|B|eB=A・eB|B|
なので、内積A・BはAのB方向成分(eB方向成分)にBの大きさを掛けた量を表すともいえる。
A・Bについてもう少し考える。
A・B=|A|cosθ|B|=|A||B|cosθ
|A|cosθ は、AのB方向成分を表すので、A・Bは、
AのB方向成分にBの大きさを掛けた大きさを表すといえる。
また、|B|cosθ は、BのA方向成分を表すので、A・Bは、
BのA方向成分にAの大きさを掛けた大きさを表すともいえる。
Aの単位ベクトルをeA、 Bの単位ベクトルをeBとすると
A・B=|A|eA・|B|eB =|A||B|eA・eB
ここで、eA・eBは、eA・eB=cosθ θはeAとeBの成す角(AとBの成す角)となる。
この値は、たとえば
eAとeBが同じ向きで平行の時 '1'
eAとeBが逆向きで平行の時 '-1'
eAとeBが垂直の時 '0'
eAとeBの成す角が鋭角なら'1〜0'
eAとeBの成す角が鈍角なら'0〜-1'
となり、二つのベクトルの平行の度合の様なものを表すともいえる。
A・Bは、Aの大きさとBの大きさの積に、平行の度合を掛けたものともいえる。
内積をベクトルの成分で表すことを考える。右図のように、原点Oを始点とする位置ベクトルA、B
を考える。
(A=(Ax,Ay,Az)、B=(Bx,By,Bz))
三角形OABで、OAとOBのなす角をθとして余弦定理を使えば、
|AB|2=|A|2+|B|2−2|A||B|cosθ
|AB|2=(Ax−Bx)2+(Ay−By)2+(Az−Bz)2
=|A|2+|B|2−2(AxBx+AyBy+AzBz)
これを上の式に代入して両辺を入れ替えれば、
−2|A||B|cosθ=−2(AxBx+AyBy+AzBz)
|A||B|cosθ=AxBx+AyBy+AzBz
=A・B
A・B=|A||B|cosθ=AxBx+AyBy+AzBz
と表現される。(成分毎の積の和で与えられる。)
A・B=AxBx+AyBy+AzBz
B・A=BxAx+ByAy+BzAz=
A・B
よって、交換則が成り立つ。
C=(Cx,Cy,Cz)とすれば、
A±C=(Ax±Cx,Ay±Cy,Az±Cz)より、
(A±C)・B=(Ax±Cx)Bx+(Ay±Cy)By
+(Az±Cz)Bz
=AxBx±CxBx+AyBy±CyBy
+AzBz±CzBz
=(AxBx+AyBy+AzBz)±(CxBx+CyBy+CzBz)
=A・B±C・B
よって、分配則が成り立つ。
まとめれば、
A・B=B・A
(A±C)・B=A・B±C・B