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電気磁気学I (1997年度 後期 本試験) 答の解説コーナー

I 半径R(m)の接地していない導体球が真空中にある。以下の問いに答えよ。

 @Q(c)の電荷を導体球に与えた。電荷はどの様に分布するか。

 導体球内部では、電界が’0’であるから、導体内部には電荷は存在しない。よって、電荷は導体表面に分布する。 また、導体表面では、電界が導体表面に対して垂直になるように電荷は分布する。本問題では、導体は球であるから、電界が表面で垂直であるためには、 導体表面で電荷は均一に分布しなければならない。球の表面積は4πR2であるから、
導体球表面に Q/4πR2 (c/m2)の面電荷密度で均一に分布する。

 A導体球の中心よりr(m)における電界の方向と大きさを求めよ。

 電界の方向は、導体球の中心より外に向かう方向(導体球表面に対して垂直な方向)であるから、 導体球の中心を中心とする半径rの閉曲面でガウスの定理を使えば、電界の大きさEは、
 E4πr2=0    (r<R) → E=0(V/m)
 E4πr2=Q/ε0 (r>R) → E=Q/4πε02(V/m)
ベクトルで表せば、導体球の中心から電界を求める点までの位置ベクトルを  として、
 =Q/4πε02/||=Q/4πε03

 B無限遠を基準にしたとき、導体球の電位を求めよ。

 無限遠からRまで電界を積分すれば得られる。
 電位=∫−E(r)dr(r;∞→R)=∫−Q/4πε02dr(r;∞→R) =[Q/4πε0r](r;∞→R)=Q/4πε0
 よって導体球の電位は、Q/4πε0R (V) (導体球全体が同電位)

II 比誘電率1の媒質中で平面導体の表面よりH(m)の位置にQ(c)の点電荷を持ってきた。以下の問いに答えよ。ただし、平面導体の面積は、Hに対して無限に広いと見なせるとする。

 @導体表面に誘起される電荷を求めよ。(座標は適当に設定せよ。)

 電気影像法の説明を参考にする。電界は、導体表面に対して垂直であることを考慮して、 Q(c)の点電荷から平面導体に下ろした垂線の足を基準として、導体平面上の電界を求める点までの距離をrで表せば、 導体表面から垂直に外向きの方向に選んだ電界の成分Elは、
−Q/2πεrε0(|r|2+H2)*H/(|r|2+H21/2で表される。 よって、表面電荷密度σ(r)は、σ(r)=Dl=εrε0l
=−Q/2π(|r|2+H2)*H/(|r|2+H21/2 比誘電率εrには無関係に、電荷分布は−QH/2π(|r|2+H23/2(c/m2
(孤立電荷の総量がQ(c)であるから、誘電率に関わらず、平面導体表面には’総量’で−Q(c)の電荷が分布する。)

 A点電荷の受ける力を求めよ。

電気影像法の説明と同様にして、2H(m)の距離に影像電荷−Q(c)があるので、力は平面導体から離れる方向を正にとれば、
−Q2/16πε02 (N)
(または、)大きさ Q2/16πε02(N)で導体平面に垂直に近づく方向に力を受ける。

 B全体が比誘電率εrの媒質で満たされたとき、導体表面に誘起される電荷の分布と点電荷の受ける力はどの様に変化するか。

  誘電率が空間的に均一であれば、電荷分布(電束密度分布)は誘電率にはよらない。電界は、誘電率が空間的に均一で電荷分布が変化しなければ、 比誘電率に反比例するので、力も比誘電率に反比例する。よって、導体表面に誘起される電界の分布は変化しない。力は方向は不変で、1/εr倍になる。

III 面積S(m2)の導体平板1,2が間隔d(m)で並行にある。(S≫d2)以下に答えよ。

 @導体平板1,2にそれぞれσ1(c/m2),σ2(c/m2)の電荷を与えた。導体平板1,2の中心を原点として導体平板1に垂直に向かう方向にz軸を選んで、任意の位置における電界の方向と大きさを求めよ。

 電界が、すべての点電荷の合成であることを考慮して、導体平板1,2で別々に電界を求めておいて、合成する。 面電荷密度σで電荷が分布する導体平板による電界は、電界の計算例を参考にして、平板に垂直で外に向かう方向で、大きさは、
σ/2ε0(V/m) となる。(電界は平板からの距離にはよらない)。これを参考にして、z軸の方向に電界の方向を定めれば、
平板1の作る電界E1 と 平板2の作る電界E2 は、
 d/2<z        E1= σ1/2ε0  E2= σ2/2ε0
−d/2<z<d/2   E1=−σ1/2ε0  E2= σ2/2ε0
 z<−d/2       E1=−σ1/2ε0  E2=−σ2/2ε0

故に電界E(z)は、それぞれの値を加えて、
 d/2<z        E(z)=E1+E2= (σ1+σ2)/2ε0 (V/m)
−d/2<z<d/2   E(z)=E1+E2=(−σ1+σ2)/2ε0 (V/m)
 z<−d/2       E(z)=E1+E2=−(σ1+σ2)/2ε0 (V/m)

 A@において、導体平板1,2の電位差を求めよ。

 1から2に至る電位差V12は、V12=∫−Edz(z;d/2→−d/2) =−[(−σ1+σ2)/2ε0](z;d/2→−d/2)
=(σ1−σ2)/2ε0*(−d)=(σ2−σ1)d/2ε0 (V)

 B@において、z軸方向の電界をzの関数としてグラフで表せ。

 σ1、σ2の符号や大小によって、見かけ上グラフが少し変化する。
例として、σ1>σ2>0とすれば、電界分布は、図中の赤い線のようになる。
 C導体平板1,2をキャパシタと見なしたとき、静電容量を求めよ。

 静電容量Cは、平板1,2に符号の異なる等量の電荷Q(c)を与えたときの電位差V(V)によって、
 C=Q/Vで与えられる。平板1に−Q(c)、平板2にQ(c)の電荷(Q>0とする)を与えると電荷密度はそれぞれ、−Q/S、Q/Sになる。
ゆえに、Aを参考にして電位差Vは、V=Qd/ε0S となる。
よって、 C=ε0S/d (F)

 


これ以降はありません

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