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電気磁気学I (1999年度 後期 追・再試験) 答の解説コーナー


I 真空中に、充分長い外半径R1[m]で筒の肉厚t1[m]の円筒導体1と内半径R2[m]で筒の肉厚t2[m]の円筒導体2が同軸状に配置されている。 以下の問いに答えよ。(R1<R2とする。)

 @ 円筒導体2の外側表面を接地して、円筒導体1に単位長さ当たりλ[C/m]の電荷を与えた。円筒導体1および円筒導体2には、どの様に電荷が分布するか。

円筒導体1について−−−
導体では、電荷は表面に分布する。ただし、円筒の内側表面にもし電荷が存在すると、円筒導体肉厚内部に電界が存在することになるので、’導体内部に電界が存在しない’ことと矛盾する。よって、内側表面には電荷は存在しない。ゆえに、与えられた単位長さあたりλ[C/m]の電荷は、円筒の外側表面に均一に分布する。 すなわち、面電荷密度 λ/2πR1 [C/m2]で、円筒の外側表面に分布する。

円筒導体2について−−−
導体では、電荷は表面に分布し、導体内部には電界は存在しない。円筒導体の内側表面のごく内側での電界が、λ/2πε02であることを考慮して、円筒導体の内側表面を挟んでガウスの定理を用いれば、円筒導体の内側表面には、−λ/2πR2[C/m2]の電荷が分布することが導かれる。円筒導体の外側表面は、接地されており、電位は'0'である。無限の遠方でも電位は'0'であるから、円筒導体の外側表面には電荷は分布しない。

 A @において、円筒導体1の中心軸からの距離r[m]における電界の大きさを求めよ。

同軸の中心を中心として、半径r、高さHの円柱閉曲面でガウスの定理を使えば、
r<R1、R2<rのとき  E=0 [V/m]
1<r<R2 のとき  E=λ/2πε0r [V/m]

 B @において、円筒導体1の中心軸からの距離R[m]における電位を求めよ。

電位φ=∫−Edr(r;R2〜R)
   =0 [V] (R2<R)
   =λ/2πε0*log(R2/R) [V] (R1<R<R2) 
   =λ/2πε0*log(R2/R1) [V] (R<R1) 

 C Bにおいて、全体を比誘電率εrの媒質で満たした。電位はどうなるか。

電界が1/εrになるので、電位も真空中に比べて、1/εrになる。

 D Cにおいて、円筒導体1と円筒導体2の間の単位長さ当たりの静電容量を求めよ。

電位差φ0がλ/2πε0εr*log(R2/R1)であるから単位長さあたりの静電容量CLは、
 CL=λ/φ0=2πε0εr/log(R2/R1) [F/m]

 E εr=2、R1=1.1[mm]、R2=3[mm]、t1=t2=0.1[mm]とする。 Dにおいて、単位長さ当たりの静電容量はいくらか。 ( ただし、loge(3/1.1)=1、ε0=8.854×10-12[C/Vm]としてもよい。

Dを参考にして、
 CL=2πε0εr/log(R2/R1) =2π×8.854×10-12×2
=1.1×10-10 [F/m] =110[pF/m]

 

II 真空中に接地された無限に広い平面導体がある。次の問に答えよ。必要な座標は各自で設定せよ。

 @ Q[C]の点電荷を無限の遠方から、平面導体の表面からの高さH[m]の位置へ近づけた。点電荷の受ける力を求めよ。

導体平面表面に対して反対の位置に−Q[C]の影像電荷を考えればよいので、Q[C]の点電荷の受ける力は導体平面に近づく方向に働き、 その大きさは、距離が2Hになるので、Hの増加する方向に力の方向をそろえて、
  F=−Q2/4πε0(2H)2=−Q2/16πε02 [N]

 A @において、点電荷の獲得した静電ポテンシャルエネルギーを求めよ。

ポテンシャルエネルギーφは、
  φ=∫−FdH(H;∞〜H)=−Q2/16πε0H [J]

 B @において、平面導体にはどの様な現象が起きているか。

Q[C]の点電荷から見て、−Q[C]の点電荷が導体平面表面に対して反対の位置にあるかのような電界を引き起こすように導体表面に電荷が誘起される。 導体表面のある点に誘起される電荷は、影像電荷での議論を参考にして、Q[C]の点電荷から導体平面に下ろした垂線の足から までの距離をr[m]とすれば、面電荷密度σ(r)[C/m2]として、

  σ(r)=−Q/2π*H/(r2+H23/2

と表される。

III 真空中の点(0,−1,0)[m]にQ1[C]の点電荷、点(0,1,0)[m]にQ2[C]の点電荷がある。以下の問いに答えよ。

 @ Q1=−Q2=1×10-9[C]のとき、原点における電界、電位、電束密度、単位体積当たりの静電エネルギーを求めよ。

原点における電界、電束密度はY軸の方向を向くので、Y成分だけについて考える。Y軸の正の方向に電界Eと電束密度Dの正の方向を選んで、
電界              : E=(Q1−Q2)/4πε0 [V/m]
電束密度            : D=(Q1−Q2)/4π [C/m2]
電位              : φ=(Q1+Q2)/4πε0 [V]
単位体積当たりの静電エネルギー : w=ED/2 [J/m3] 

ゆえに、与えられた電荷に対しては、
電界              : 18 [V/m]
電束密度            : 1.6×10-10 [C/m2]
電位              : 0 [V]
単位体積当たりの静電エネルギー :  1.44×10-9 [J/m3] 

 A Q1=Q2=1×10-9[C]のとき、原点における電界、電位、電束密度、単位体積当たりの静電エネルギーを求めよ。

@を参考にして、
電界              : 0 [V/m]
電束密度            : 0 [C/m2]
電位              : 18 [V]
単位体積当たりの静電エネルギー : 0 [J/m3] 

 B @で、全体を比誘電率 2 の媒質で満たした。原点における電界、電位、電束密度を求めよ。

電界、電位は比誘電率に反比例するので、
電界              : 9 [V/m]
電束密度            : 1.6×10-10 [C/m2]
電位              : 0 [V]
単位体積当たりの静電エネルギー :  0.72×10-9 [J/m3] 

 C Aで、全体を比誘電率 2 の媒質で満たした。原点における電位と、単位体積当たりの静電エネルギーを求めよ。

Bと同様にして、
電界              : 0 [V/m]
電束密度            : 0 [C/m2]
電位              : 9 [V]
単位体積当たりの静電エネルギー : 0 [J/m3] 

これ以降はありません

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