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電気磁気学I (1998年度 後期 本試験) 答の解説コーナー

I 真空中に充分長い外半径R1(m) の円筒導体1と内半径R2(m) の円筒導体2が同軸状に配置されている。 以下の問いに答えよ。(R1<R2とする。)

 @ 円筒導体2を接地して、円筒導体1に単位面積当たりσ(C/m2) の電荷を与えたとき、電界の方向が円筒導体の中心軸に対して垂直になることを説明せよ。

電気磁気学I '97 12/5 提出期限のレポートの略解IIを参考にする。  電界を知りたい点をとし、から円筒の中心軸に下ろした垂線の足をとする。を通って、円筒の中心軸に垂直な面Sで、 円筒をA,Bの二つの領域に分ける。電界は、すべての電荷の作る電界の合成で与えられるのであるから、A,Bのそれぞれの領域にある電荷による電界を合成すればよい。
 Aにある電荷とそれの作る電界ABにある電荷とそれの作る電界Bは、面Sに対して対称になっている。 よって、面Sに対して垂直な成分はABで互いにうち消し合う。 ゆえに、ABを合成した電界は、面S内にしか成分を持たない。
 次に、円筒の中心軸とを含む面Sで、円筒をa,bの二つの領域に分ければ、電界は、a,bのそれぞれの領域にある電荷による電界を合成すればよい。
 aにある電荷とそれの作る電界abにある電荷とそれの作る電界bは、面Sに対して対称になっている。 よって、面Sに対して垂直な成分はabで互いにうち消し合う。 ゆえに、ab‖内にしか成分を持たない。
 上で述べたことをまとめれば、電界は、面Sと面S内の成分しか持たないことが分かる。これが同時に満たされるのは、二つの面の交線の方向である。線は、点と点を結ぶ線と同一であるから、電界は、点と点を結ぶ方向に向くことが分かる。
 よって、電界は、円筒の中心軸に対して垂直の方向になる。

 A @において、円筒導体の中心軸からの距離r(m) における電界の大きさを求めよ。

電気磁気学I '97 12/5 提出期限のレポートの略解IIを参考にする。
 円筒の中心軸を中心軸にした長さL(m)、半径r(m)の円柱状の閉曲面で、ガウスの定理を使う。
電界の方向は、中心軸に対して垂直であるから、円柱状の閉曲面において、上面と下面の電界の面積分は'0'になる。よって、側面(円筒部分)だけ考えればよい。 円筒部分では電界の方向と面は垂直で、電界の大きさは等しいので、
  ∫・d=E∫dS=E2πrL
 これが、閉曲面内の全電荷をε0で割った値に等しい。
  r<R1の時、電荷はない。  E=0(V/m)
  R1<r<R2の時、全電荷量は、σ2πR1L(C)であるから、  E=σR1/ε0r(V/m)   
  R2<rの時、円筒2は、接地されているので、外部には電界は及ばない。  E=0(V/m)   
 (接地されていると言うことは無限遠方の電位と同じと言うこと、無限遠方からR2まで、電界を位置に対して積分して’0’であるから、 円筒2の外のすべての領域で電界は0(V/m)である。こうなるように接地を通して円筒2に電荷が移動する。)

 B @において、円筒導体1の電位を求めよ。

電気磁気学I '97 12/5 提出期限のレポートの略解IIを参考にする。 円筒1の電位Vは、円筒2(基準電位)から円筒1まで電界を積分すれば得られる。
 V=∫−・d;R2→R1
  =−∫σR1/ε0r・dr(;R2→R1
  =−σR1/ε0・(log(R1)−log(R2))
  =σR1/ε0・log(R2/R1)(V)

 C @において、単位長さ当たりの静電容量を求めよ。

 L(m)当たりの電荷量Qは、2πR1Lσ(C)であるから、L(m)の長さにおける静電容量C(F)は、
 C=Q/V=2πR1Lσ/(σR1/ε0・log(R2/R1))
  =2πε0L/log(R2/R1)(F)
 単位長さ当たりの静電容量CL=C/Lであるから、
 CL=2πε0/log(R2/R1)(F/m)

 D Bにおいて、全体を比誘電率εrの媒質で満たした。電位はどうなるか。

電界が比誘電率に反比例して減少するので、電位も比誘電率に反比例して減少する。
σR1/ε0εr・log(R2/R1)(V)

 E Dにおいて、εr=2、R1=1.1(mm)、R2=3(mm)とする。円筒導体1、2間の単位長さ当たりの静電容量はいくらか。 (loge(3/1.1)=1.0 として計算してもよい)

Cを参考にすれば、誘電媒質中も単位長さ当たりの静電容量は、2πε0εr/log(R2/R1)(F/m)である。
 値を代入すると
 110pF

II 真空中に半径R(m) のq(C)に帯電した導体球がある。次の問に答えよ。

 @ 導体球の電位を求めよ。

中心から距離H(m)の点における電界Eは、導体球の中心を中心とする半径H(m)の球状の閉曲面に対してガウスの定理使って求めることができる。 電界は、導体球の中心から外に向かう方向である。
r>Rの場合だけ考えればよいので、4πr2E=q/ε0
導体球の電位Vは、V=−∫EdH(H;∞→R)=−∫q/4πε02・dH=q/4πε0R(V)

 A 導体球の中心からr(m)の位置にQ(C)の点電荷を近づけたとき、導体球の電位を求めよ。(R<rとする。)

接地していない導体球に対する影像電荷の項を参考にする。 導体球表面での電界を表面に対して、垂直にする影像電荷については、Q(c)の電荷と合わせて、導体球の電位を'0'にするので、考慮する必要はない。 電位を考慮すべき電荷は、最初から導体球に与えられていたq(c)の電荷と、導体球の全電荷を不変に保つために中心に与えるQR/r(C)の電荷である。 導体球に与えられたq+QR/r(c)の電荷が与える電位を求めればよい。 よって、@と同様にして、
(q+QR/r)/4πε0R(V) (=(q/4πε0R+Q/4πε0r)(V))

III 真空中の点(1,0,0)(m)に1(C)の電荷、点(0,1,0)(m)に1(C)の電荷、点(0,0,1)(m)に1(C)の電荷がある。以下の問いに答えよ。

 @ 原点における電界、電位、電束密度、単位体積当たりの静電エネルギーを求めよ。

それぞれの電荷が原点に与える電束密度,電位はそれぞれ、
(1,0,0)の電荷に対して、 (−1/4π,0,0)(c/m2)  1/4πε0(V)
(0,1,0)の電荷に対して、 (0,−1/4π,0)(c/m2)  1/4πε0(V)
(0,0.1)の電荷に対して、 (0,0,−1/4π)(c/m2)  1/4πε0(V)
よって、
電位は            3/4πε0(V) (=27×109(V))
電束密度は         (−1/4π,−1/4π,−1/4π)(c/m2)
              (−0.08,−0.08,−0.08)(c/m2) または、大きさ0.14(C/m2)で(-1,-1,-1)の方向
電界は、D/ε0より  (−1/4πε0,−1/4πε0,−1/4πε0)(V/m)
              (−9×109,−9×109,−9×109)(V/m) または、大きさ1.5×1010(V/m)で(-1,-1,-1)の方向
単位体積当たりの静電エネルギーは、/2より、 3/2(4π)2ε0(J/m3) または、1.1×109(J/m3

 A 全体を比誘電率 2 の媒質で満たした。点(1,1,1)(m)における電界、電位、電束密度を求めよ。

それぞれの電荷が点(1,1,1)(m)に与える電束密度,電位はそれぞれ、
(1,0,0)の電荷に対して、 (0,1/4(2)3/2π,1/4(2)3/2π)(c/m2)  1/4(2)1/2πε02(V)
(0,1,0)の電荷に対して、 (1/4(2)3/2π,0,1/4(2)3/2π)(c/m2)  1/4(2)1/2πε02(V)
(0,0.1)の電荷に対して、 (1/4(2)3/2π,1/4(2)3/2π,0)(c/m2)  1/4(2)1/2πε02(V)
電位は     3/8(2)1/2πε0(V) (=9.5×109(V))
電束密度は   (1/4(2)1/2π,1/4(2)1/2π,1/4(2)1/2π)(c/m2)
         (0.056,0.056,0.056)(c/m2)または、大きさ0.097(c/m2)で、(1,1,1)の方向
電界は     (1/8(2)1/2πε0,1/8(2)1/2πε0,1/8(2)1/2πε0)(V/m)
         (3.2×109,3.2×109,3.2×109)(V/m)または、大きさ5.5×109(V/m)で、(1,1,1)の方向

 


これ以降はありません

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