分極で述べたように、媒質中の分極密度Pは、その点における電界Eに比例し、比例定数をχとすれば、
P=ε0χEとおける。
さて、電束密度Dは、D=ε0E+Pとおけるので、これに上の式を代入すれば、
D=ε0E+ε0χEとかける。
この世に存在する多くの材料は電界の方向と分極の方向が一致し、この場合にはχはスカラで与えられる。 (電界の方向と分極の方向が一致しない場合には、(例えば、強誘電体などの結晶では、分極のしやすさは三つの独立した結晶の方向に対して異なる) 電界の方向と分極の方向は、それぞれ3つに分解されて、χは3×3の行列で与えられる。)
χがスカラで与えられる時には、電束密度Dは、電界Eに比例し、(D=(ε0(1+χ)E) 比例係数 'ε0(1+χ)' を誘電率 'ε' と言う。
真空中では、媒質が無い為に分極はない。よって、当然のことながら、誘電率εは、真空中の誘電率ε0となる。(ε=ε0) (実際には、真空自体も分極する・・らしいが、この分極に相当する分極率は、既に真空の誘電率ε0に含まれている。・・・)
媒質において、真空以外の分極に対する分極率χを用いて、一般にε=ε0(1+χ)とかける。
よって、D=εE
分極率は媒質毎に異なるので誘電率も媒質によって異なる。媒質の誘電率と真空の誘電率の比を比誘電率εrと表せば、
ε=εrε0である。比誘電率は、真空で'1',空気で(1より大きいが)'ほぼ1'、無機固体で'2−10'、水で'80程度'、強誘電体で'数千程度'で、温度、圧力、成分等によって異なる。(理科年表などを参照する) 真空の誘電率はMKSA単位系で、ε0=8.854×10-12であり、 媒質の誘電率は、せいぜい10-9である。媒質での電気現象を考える場合には、真空中(空気中)の大きさに対してどの程度と考えた方が、(大きさの)理解が容易であるし、数値が1〜数千までで表現できて表現が容易であるので、ほとんどの場合媒質の誘電率は比誘電率によって表される。
D=εE=εrε0E
D=εrε0E=ε0(1+χ)E
P=D−ε0E=(εr−1)ε0E=ε0χE
であるから、
εr=1+χ、χ=εr−1
比誘電率εrの媒質中では、電束密度と電界の間には、上のような関係が成立する。
E=D/εrε0であるから、電界の大きさは比誘電率に反比例することが分かる。
一般に、空間において一部の誘電率を変えた時には、上式の関係は常に成り立つが電束の分布も変化する為に単純に電界が比誘電率に反比例して小さくなるとは言えない。
(もちろん、空間の各点において、’電束蜜度と電界の比は、比誘電率に反比例する’とはいえる)
しかし、空間全体に一様な誘電率を空間に対して一様に変えた時には、電束の分布は変化しない為に、電界は比誘電率に反比例して小さくなる。
同様に、電界の分布で決る電位も、比誘電率に反比例して小さくなる。