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空間における電荷分布と静電エネルギー


 空間に導体の塊1、2、3、・・・が分布しているとする。この時、導体1の電位がV1であれば、 導体1に無限の遠方から電荷ΔQを運んできて、導体1に加えれば導体1のエネルギーは、(ΔQがもたらすエネルギーに相当する) V1ΔQだけ増加する。ゆえに、導体1のエネルギーの増分をΔW1とすれば、
  ΔW1=V1ΔQ
ところで、空間における静電容量で触れたように、i番目の導体の電位Viは、
  Vi=Σpijj(j;1、2、3、・・・)
とかける。

いま、すべての導体は、電荷を持っていないとする。ここで、導体1にQ1(c)の電荷を与えたときのエネルギーを考える。 導体1に電荷が与えられても、1を除く導体には電荷が無いので、エネルギーは導体1だけが獲得する。(もちろん電位はすべての導体が変化し得る。)
  W=W1=∫dW1(q1;0〜Q1)=∫V1dq1(q1;0〜Q1
     =∫p111dq1(q1;0〜Q1)=1/2*p1112

これに、加えて導体2にQ2(c)の電荷を与えたときのエネルギーを考える。 導体2に電荷が与えられても、2を除く導体では電荷量が変化しないので、2を除く導体のエネルギーは変化しない。(もちろん電位はすべての導体が変化し得る。)
すでにこの系は、導体1のエネルギーを得ているので、全エネルギーは、このエネルギーと導体2が獲得するエネルギーW2の和になる。
  W2=∫dW2(q2;0〜Q2)=∫V2dq2(q2;0〜Q2
     =∫(p211+p222)dq2(q2;0〜Q2
     =∫p211dq2(q2;0〜Q2)+∫p222)dq2(q2;0〜Q2
     =p2112+1/2*p2222
よって全エネルギーWは、
  W=1/2*p1112+p2112+1/2*p2222
で表される。

同様に、導体3、4、・・・にQ3、Q4、・・・なる電荷を順番に与えていけば、導体にQ1〜Qnなる電荷があるときの 全エネルギーWは、

W=1/2*p1112+1/2*p2222+・・・+1/2*pnnn2
   +p2112
   +p3113+p3223
   +p4114+p4224+p4334
          ・
          ・
          ・
          ・
   +pn11n+pn22n+・・・+pnn-1n-1n

自身に電荷を供給するとポテンシャルが比例して大きくなるので、次の微小電荷が得るエネルギーは、以前よりも大きくなる。電荷が多ければ、同じ電荷量に対して 獲得するエネルギーは大きくなってゆく(被積分関数は変数で、エネルギーは電荷に対して二乗で与えられる)が、他の導体によって作られるポテンシャルは、 電荷がどれだけ供給されようと変化しない。(被積分関数は定数で、エネルギーは電荷に対して一乗で与えれれる)


逆の順番に電荷を供給しても系全体のエネルギーは同じはずである。n番目の導体から電荷を供給すれば、同様にして全エネルギーWは、

W=1/2*pnnn2+1/2*pn-1n-1n-12+・・・+1/2*p1112
   +pn-1nnn-1
   +pn-2nnn-2+pn-2n-1n-1n-2
   +pn-3nnn-3+pn-3n-1n-1n-3+pn-3n-2n-2n-3
          ・
          ・
          ・
          ・

うえで求めたエネルギーと一致するはずであるから、Qijの積に関する項(QijとQji)は 等しい。よって、その係数は等しい。ゆえに、
  pij=pji

電位係数pijを要素とする行列は、対称行列であることが分かる。これは、前項で触れた。


さて、pjiij=pijjiであるから、 pjiijを1/2*pjiij+1/2*pijjiと変形すれば、
W=1/2*p1112+1/2*p2222+・・・+1/2*pnnn2
   +1/2*p1221+1/2*p2112
   +1/2*p1331+1/2*p3113+1/2*p2332+1/2*p3223
          ・
          ・
          ・
W=1/2*p1112+1/2*p1221+1/2*p1331+・・・
   +1/2*p2112+1/2*p2222+1/2*p2332+・・・
          ・
          ・
          ・
   +1/2*pn11n+1/2*pn22n+・・・+1/2*pnnn2
W=1/2*Q1Σp1jj(j;1〜n)+1/2*Q2Σp2jj(j;1〜n)+・・・

前項で触れたように、Σpijj(j;1〜n)=Viであるから、  

W=1/2*Q11+1/2*Q22+・・・=Σ1/2*Qii(i;1〜n)


 さて、上の表式は、T〜n 番目までの、導体を考えたとき、それぞれの導体の電位と電荷量によって表されている。それぞれの導体を充分小さな微小領域ΔVの集合として考えれば、 それぞれの微小領域に番号を振って、nを微小領域の総数Nに置き換えればよいことが分かる。微小領域毎に電位×電荷量×1/2を求めて、すべて加えれば、空間に分布する全エネルギーが得られることが分かる。このことより、上式は導体に電荷を与えて求めた式ではあるが、一般に導体に与えた電荷でなくても成立することが分かる。(ただし、点電荷に対しては、電位が発散するので、そのままでは適用できない。)
 電荷が空間に連続的に三次元的に分布するときには、空間を微小領域に分けて、それぞれの点のエネルギーを足し合わせれば、静電エネルギーは計算される。

 電荷密度の分布をρ()(C/m3)、電位分布をφ()(V)とすれば、点にある体積ΔVの微小領域の電荷量はρ()ΔVであるから微小領域のエネルギーは 1/2*ρφΔV となる。全空間にわたって足し合わせ(積分す)れば、静電エネルギーWは

 W=1/2*∫ρφdV=1/2*∫(div)φdV  (電束密度と電荷密度との関係より
で与えられる。

 ここで、 div(φ)=(div)φ+・▽φ なる関係を使うと
 両辺を体積積分して、
 ∫div(φ)dV=∫(div)φdV+∫(・▽φ)dV
 移項して、      
 ∫(div)φdV=∫div(φ)dV−∫(・▽φ)dV
 右辺第一項 ∫div(φ)dV=∫(φ)・d =0 (閉曲面として、電荷が分布している領域より、充分大きな領域を与えるように選べば(閉曲面上での電位は、電荷から充分に遠く離れるので、距離に反比例して’0’に近づく。電束密度の大きさも充分に離れると距離の二乗に反比例して’0’に近づく。積分する面の大きさは、距離の二乗に比例して大きくなるので、積分値は閉曲面までの距離(もし球なら半径)に反比例して’0’に近づく。よって、右辺第一項は’0’である。
 右辺第二項は、電界と電位の関係=−dradφを使えば、 ・▽φ=− であるので、
 右辺第二項 −∫(・▽φ)dV=∫()dV

 ゆえに、全エネルギー W=1/2*∫ρφdV=1/2*∫()dV
 全静電エネルギーは、全電荷に対して、それぞれの電荷の静電ポテンシャルをかけて1/2倍して加えれば得られるが、 この値は、全空間に対して、それぞれの位置での電束密度と電界の内積を積分して1/2倍した値と等しいことが分かる。

 上の式は、空間のある点における静電エネルギーの体積密度が1/2*)・)で与えられることを示す。 (この式を体積積分すれば、先の式になる。)


これでこの項目は終わり

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