位置変数(x,y,z)を引き数にする関数f(x,y,z)を考える。
関数fに対してx,y,zに関する偏微分をそれぞれの方向の成分とするベクトル(∂f/∂x,∂f/∂y,∂f/∂z)(=gradfとあらわす)を考える。 ある点r(=(x,y,z))とその点からの微小変位r(=(凾,凾凵C凾噤j)が、gradfや変位凾とどのような関係になるかについて考える。
gradfとrとの内積をとると
gradf・r=∂f/∂x*凾+∂f/∂y*凾凵{∂f/∂z*凾噤@(=|gradf||r|cosθ;θは、gradfとrのなす角)
となり、これはfの変位凾の一般的な表式を与える。
(凾=gradf・r より、fの微小変位凾は、gradfと微小変位rとの内積とみなせる)
ここで、|r|=一定とすれば、凾の最大値は、gradfとrが同一方向の時である。 rが、gradfの方向へ移動した(|r|が増加する)時が凾の最大であることから、ベクトルgradfの方向は、rにおける最大増加を与える方向であるといえる。 この時は、凾=|gradf||r|であるので、gradfは、最大増加の方向とその増加率(傾き)を与えることが分かる。−gradfは、同様に考えれば、最も減少する方向とその大きさを与えることが分かる。
例えば、凾凵∞凾噤≠O(rをx軸の方向に変化させる)では、凾=∂f/∂x*凾で与えられるので、gradfの各成分はそれぞれの方向へfの傾きを与えることが分かる。
d
f=0として得られる ∂f/∂x*d
x+∂f/∂y*d
y+∂f/∂z*d
z=0 をx,y,zに関する微分方程式とみなせば、
この式を解いて得られる式は、x,y,zに関する一つの拘束条件を与える。
ところでこの式は、d
f=0(fの値が変化しない条件)であることから、積分定数を決めるある点r0におけるf(r0)と値の等しい点の集合(等f面)を与える。もちろんこの式は、f(x,y,z)=定数 の等f面を表す式と一致する。
∂f/∂x*凾+∂f/∂y*凾凵{∂f/∂z*凾噤≠O をみたす(凾,凾凵C凾噤j(=r)の方向はgradfとは直交する。rは、rにおいてgradfと直交する方向の点(ベクトル)の集合を与える。
つまり、rにおいてgradfを法線とする面(等f面の接平面)を与える。
この平面に含まれるいかなるベクトルもrにおいてgradfと直交する。
gradfの方向は、その点における等f面の接平面の法線ベクトルの方向を与える。(gradfは、その点において等f面に垂直である。)
gradf=(∂f/∂x,∂f/∂y,∂f/∂z)において f はすべての成分でそれぞれの変数で偏微分されるので、
ベクトルの演算Aa=(Axa,Aya,Aza)と同様の規則で書けば、
gradf=(∂f/∂x,∂f/∂y,∂f/∂z)=(∂/∂x,∂/∂y,∂/∂z)f=∇f(∇は'ナブラ'という)となる。
ここで、∇=(∂/∂x,∂/∂y,∂/∂z)は、それぞれの成分における微分を記述する演算子(微分演算子)のベクトルである。
また、gradfを(rを位置変数のベクトルとして)∂f/∂r (∇を∂/∂r)と表すこともある。
単位ベクトルex,ey,ezを使って∇をあらわせば、
円柱座標では、角度φの変化刄モに対する位置の変化はr刄モであるから、 極座標では、角度θの変化刄ニに対する位置の変化はr刄ニ、角度φの変化刄モに対する位置の変化は
XYZ座標では、 | ∇= | ( | ∂ ∂x |
, | ∂ ∂y |
, | ∂ ∂z | ) | |
円柱座標では、 | ∇= | ( | ∂ ∂r |
, | ∂ r∂φ |
, | ∂ ∂z | ) | |
極座標では、 | ∇= | ( | ∂ ∂r |
, | ∂ r∂θ |
, | ∂ rsinθ∂φ | ) |
ここで、よく使う位置変数の傾き(gradient)を求めておく。
R=|r-r0|、(ここで、r=(x,y,z)、r0=(x0,y0,z0)である。)
∇R=(∂((x-x0)2+(y-y0)2+(z-z0)2)1/2/∂x, ∂((x-x0)2+(y-y0)2+(z-z0)2)1/2/∂y, ∂((x-x0)2+(y-y0)2+(z-z0)2)1/2/∂z)
=((x-x0)/(x-x0)2+(y-y0)2+(z-z0)2)1/2, (y-y0)/(x-x0)2+(y-y0)2+(z-z0)2)1/2, (z-z0)/(x-x0)2+(y-y0)2+(z-z0)2)1/2)
∇R=(r-r0)/|r-r0|
となる。これは、大きさが'1’のベクトルで、方向は、r-r0である。(点r0から外に向かうベクトルをあらわす。)
よって、点rと点r0の間の距離を表す関数の点rに対する'傾き'は、 点r0から点rへ向かう単位ベクトルを与えることが分かる。
(距離が最も変化する方向は、点r0から外に向かう方向であるので、'傾き'が点r0から点rへ向かう方向になるのはあたりまえのことである。 ある距離の移動と距離の増加は同じであるから傾き(増え方)が'1'であるのもあたりまえである。)
∇(1/R)=(∂((x-x0)2+(y-y0)2+(z-z0)2)-1/2/∂x, ∂((x-x0)2+(y-y0)2+(z-z0)2)-1/2/∂y, ∂((x-x0)2+(y-y0)2+(z-z0)2)-1/2/∂z)
=(-(x-x0)/(x-x0)2+(y-y0)2+(z-z0)2)3/2, -(y-y0)/(x-x0)2+(y-y0)2+(z-z0)2)3/2, -(z-z0)/(x-x0)2+(y-y0)2+(z-z0)2)3/2)
=-(r-r0)/|r-r0|3
∇(1/R)=-1/|r-r0|2*(r-r0)/|r-r0|
となる。これは、大きさが点rと点r0の距離の二乗に反比例する、方向が'-(r-r0)'のベクトルである。 (点r0へ向かうベクトルをあらわす。)
この結果は、電位のところで利用する。